【VTuberが第2の初音ミクのように】熱狂的なファンコミュニティを大きく育て、どうやって成功していくか?

どのようなビジネスにおいても、クリエイターやアーティストを支えるのはファンの存在。創作活動を行うクリエイターやアーティストは活動を続けるために、一人でも多くの『自分を応援してくれるファンが欲しい』と常に願っているものです。
この記事は、ファンコミュニティの育成について熱狂的なファンを作る成功事例を集めた『ファンダム・レボリューション』ファンのコミュニティを育てたければ「儲けにならない場」を作れ|初音ミクは理想的な成功例からファンコミュニティ育成のポイントをまとめました。

  1. 消費者と『ファン』の違いとは?
  2. ファンコミュニティを成功させる3条件
  3. ファンになるきっかけ、理由は『ごく個人的なこと』
  4. 真剣なファンに10代が多い理由。ファンコミュニティと所属欲求
  5. ファンは、人生のどのようなステージにいるのか?
  6. ファンが『非商業的な活動をしやすい環境』を創る。
  7. ファンはブランドにとっての最善案は知らない

ファンダム・レボリューションの著者は、一般消費者と熱狂的なファンを次のように定義しています。

何か商品を買って、それを企業が望む形で使うのが消費者です。一方で、商業的ではない二次的な活動をおこない、その活動が商品やサービスに価値をもたらすのがファンです。

クリエイターやアーティストが作った一次創作物に対して、クリエイターやアーティストが望むカタチで使うのが「消費者」であり、一次創作物をそのまま受け取るのではなく、それを使って何らかの活動や創作を行い、付加価値をもたらすのがファンということでしょう。

つまり、受け取ることが主体の消費者心理と、自分が動かなければ気が済まないファン心理。自分にとっていい商品やサービス、創作物をみつけたとき、何らかの活動しないと気が済まないのが本当のファンであると言えます。

そのファン活動の幅は人それぞれで、初めはファン同士で話すことかもしれませんし、自分が観光大使のようになって新しいファンを呼び込むことかもしれません。なかには、重要な場所を巡礼するというのもファン行動の一種です。

このように、「自分がこうしたい!」という主体的な願望で動くのがファンです。

著者は、ファンコミュニティを盛り上げ成功させるには、3つの条件が必要だと述べています。

3つの条件とは、

  1. 必要最低限の人数」がいること。
  2. 感情的な反応を発生させる要因」があること。
  3. ファンが「感情的な反応を表現できる物理的な空間」があること。

です。

まず、1つ目の条件が『必要最低限の人数がいる』こと。クリエイターやアーティストの場合は作品を世の中に出すことで、その作品を通じて必要最低限の人数は集めることができるでしょう。特に、見ただけで伝えることができるデザイナー、イラストレーター、動画製作者には優位性があります。

初めは一人、二人かもしれません。しかし、その一人、二人を大切にしましょう。0から1を生み出す流れというのは、このようなものです。

2つ目は、「感情的な反応を発生させる要因」があること。Twitterなどのソーシャルメディアでは、たびたび『炎上』によって、注目度が上がることがありますが、この炎上が発生する背景には、「相手に、感情的な反応を発生させた」理由が必ずあります。多くの場合、炎上では、ネガティブな感情発生になりがちですが、ポジティブな感情、ネガティブな感情、どちらでも「感情的な反応を発生させる」という条件は満たしています。

『相手にどのような思いを伝えたいのか?』

そして、それを

『どのようにコンテンツにして届けるのか?』

について、ブランドとなるキャラクターやクリエイターはよく考えることが必要でしょう。

3つ目が、ファンが「感情的な反応を表現できる物理的な空間」があることですが、これは、TwitterやFacebookグループ、独自に作られたSNS、YoutubeやSHOWROOMなどのコメント欄にあたります。このような「場」があることで、物理的にはバラバラだったとしても、それはコミュニティになり、人々が協力できるようになっていきます。

『場』もオープンな場なのか、クローズドな場なのかで、ファンの行動は変わってきます。キャラクターとファンの距離感も大きく変わってきます。

複数のメディアを運営している場合、同じ距離感の場は必要ありません。1つの距離感 = 1つのメディア「場」と定義し、ファンの欲求によっていくつかの接点を用意しておくと良いでしょう。

ファンになる理由というのは、たいていは個人的なことです。たとえば多くの人は、人生で何か大きな変化が起きるような時期に、自分はどういう人間なのか、何に属しているのかといったことを自問します。

昔は「家族」や「宗教」のなかに、そうした自らの問いの答えを見つけていたと思うんですが、いまだと『ハリー・ポッター』のなかに答えを見つける、という人もいるかもしれません。

真剣なファンは10代が多いということの背景には、そういう理由があるとも考えられます。人は10代のころに、自分は何者で、何に属しているのかと自問しますよね。

ファンはコミュニティに属することで、自分と同じ興味や関心を持つ仲間と出会います。自分が好きなものと同じものが好きという人達との出会いを通じて、その対象について情報交換をしたりし、多くを学びます。

そのような日々の活動のなかで、自分のアイデンティティについて向き合ったり、行動が習慣化されることで、その場所が自分の居場所となります。一言で言えば、大学生のたまり場のようなものなのかもしれませんね。

ファンをつくりたいと思ったら、企業は商品の質に気を配ることも必要ですが、それだけではなく、ファンが人生のどんなステージにいて、どんな自問をしているのかを理解することが重要だと思います。企業が、その答えを見つける助けになるというわけです。

ファンがどのような生活をしていて、どのようなことに悩んでいるか知ることで、それを解決してくれる、手助けをしてくる場はかけがえのないものになっていきます。

創作者がコンテンツを創ろうとするとき、出すべきコンテンツだけを見るのではなく、コンテンツを出した後の結果について思いをはせてみましょう。

特に作品制作の初期である企画段階では、コンテンツを出すことによって『ファンとどのような関係性を紡ぎたいのか』。その関係性を創るためにどういうコンテンツが必要とされているのか、という逆算思考で考えてみると良いでしょう。

私の個人的な経験では、『すべてのコンテンツは手紙である』と考えています。

そしてファンのコミュニティを増やそう、育てようとしている企業にとって、最初にできることは「非商業的な活動」をしやすい環境をつくることだと思います。
アメリカの二次創作のファンの人たちは、自分たちの活動で「儲けない」ように注意深くお互いを見張っています。それがモラル・エコノミーの定義であって、道徳を非常に重要視しているんです。
もし儲けることを許せば、契約の問題など事態が複雑化してしまうので、決して儲けに走らないようにお互いに見張っているのです。それを破るような人がいたら、コミュニティのほかのメンバーが罰するというようなことすらあります。

二次創作と利益において、著者は儲からない(非商業的な)活動がファンコミュニティを大きく育てると述べています。商業と非商業は活動においては、契約や権利面などでさまざまなトラブルが発生する原因となりがちです。

このようなトラブルを避けるために、「非商業的な活動」をやりやすくする、やりやすい場を創ることがポイントの一つとなります。

「モラル・エコノミー(道徳経済)」という言葉がありますが、ファンが映画なり本なりにものすごく熱狂的に入れ込んでいると、自分はそこから何かを創り出して、もっと価値を上げる権利がある、あるいはその義務があると思い込んでしまうことがあります。

自分のその対象物に対する愛は、著作権よりも何よりも上にくるものなんだと思ってしまう。それによって失われるものよりも、自分の愛の方が重要なんだと思い込んでしまうんです。

熱狂的なファンの思考として2点、挙げられています。熱狂的なファンというのは、

  1. 自分はそこから何かを創り出して、もっと価値を上げる権利がある、あるいはその義務があると思い込んでしまいがちになる。
  2. 自分のその対象物に対する愛は、著作権よりも何よりも上にくるものなんだと思ってしまいがちになる。

これはファンに限らず人間であれば誰しもがもっている一側面ですが、熱狂というのはこのようなエゴや心理状態を生む土壌にもなることは心がけておくべきでしょう。

ファンは賢いので、利用していようとしていることはすぐわかるし、よく気づく。「ここにファンが集っているから、ここでこうすればいいんだろう」という安直な施策は逆効果。
そうではなく、『ファンが望むもの』を提供する。ファンが本当に何が好きなのか、何をしているのかを理解することが重要。
ファンが好きなものとクリエイター自身が好きなものが合っていればいるほど、そのコミュニティは大きく成長する。

ファンは、クリエイター・アーティストを支える大切な存在です。しかし、

ファンは、『自分たちファンのために何がベストかは知っていますが、企業やブランドにとって何がベストかを知っているわけではありません』。

とも著者は述べています。

ファン行動の中には、さまざまな『こうした方がいい』という意見の表現も出てきます。まだ、ブランドの価値観が決まっていない段階のクリエイターやアーティストは、そのようなファンの意見を聞くことで揺れ、葛藤が生まれがちです。

最終的には、何が良いか悪いかは1次創作物を生み出すクリエイターやアーティスト自身が決めることです。
なぜなら、世界で一番そのブランドについて考えている人は、他でもないそれを生み出したクリエイターであるあなた自身だからです。

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